私たちは今、大きな時代の転換期にいます。
昨日まで存在していたものが、明日には変容してしまうかもしれない。
せわしなく、先の見えない闘いを誰もが余儀なくされています。
しかし、予測のつかないスピードで変わりゆく日常に、
ただちに適応できるか否かは、個々人の置かれた状況によって異なるはずです。
世界規模で危機意識が共有されつつある「気候変動」は、私たち人間の心の危機でもあります。
耳障りのいいキャッチフレーズが飛び交う中で、安易な言葉に惑わされず、
答えのない問いを着実に耕していくためには、何が必要なのでしょうか?
私は、「異質な他者との対話」ではないかと感じます。
実感の及ぶ範囲を少しずつでも、確かに拡げていくこと。
決して簡単なことではない。時間もかかる。
それでも、なんとか前に進んでいくために、私は文学の力を借りたいと思います。
物語には不思議な力があります。
一見、全く関係のないようなストーリーが自らの記憶や体験を呼び起こし、
他者の痛みを自分の痛みとして感受できる可能性にひらかれています。
それは、対岸の火事だと思っていた問題が、自らの人生に地続きであることを発見する過程でもあります。
危機の時代を、それでも生きていくために、心の拠り所を保ち続けていくために、気候文学対話を行います。